「2018年夏季全国中等日本語教師研修会」実施報告
北京日本文化センターは人民教育出版社と共催で、毎年春と夏に全国の初等・中等教育機関の日本語教師を対象とした研修会を行っています。2018年夏季研修は引き続き、新しい『課程標準』の中で重要視されている「核心素養」について理解を深め、その核心素養育成を目指す作文指導をどのように行えば良いかについて考えました。また、新しい試みとして、例年夏季は北京市内で開催されてきましたが、今回は遼寧省瀋陽市瀋陽外国語学校が開催校となりました。
日程 2018年7月31日(火)~8月2日(木) ※30日(月)受付
会場 瀋陽市外国語学校(沈阳市和平区南京南街135号)http://www.syfls.cn/
主催 国際交流基金北京日本文化センター、人民教育出版社課程教材研究所日本語課程教材開発センター
テーマ 「核心素養育成を目指す日本語作文指導」
参加者 127名(99機関)
外部講師
高昇先生(教育部試験センター外国語責任者、中国語:教育部考试中心外语考试处处长)
呉敏先生(北京市月壇中学 日本語教師)
研修目標
①日本語クラスにおける核心素養に対し、理解を深める。
②高考改革の政策と実施状況を知る。
③日本語作文指導の理論と方法を学び、考える。
④参加教師間で交流し、情報・リソース・意見交換を行う。
プログラム
時間 | 内容 | 会場 | |
7月30日 | 17:00~20:00 | 受付、資料受取 | ホテルロビー |
7月31日 | 08:10 | 送迎バス出発 | ホテル入口 |
09:00~09:40
09:40~09:55 10:00~12:00 |
開会式
記念撮影 瀋陽市外国語学校紹介主催校 講座①「高考日本語の改革」(高昇先生) |
ホールA
学校正面玄関 ホールA |
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昼食 | 食堂 | ||
14:00~15:30
15:40~16:10 16:20~17:20 |
講座②「核心素養と作文教授」(李家祥先生)
講座①、②に対する質疑応答、討論会 ワークショップⅠ「研修目標を立てる」 |
ホールB | |
17:40 | 送迎バス出発 | 校門 | |
18:00~20:00 | 懇親会 | ホテル1階 | |
8月1日 | 08:10 | 送迎バス出発 | ホテル入口 |
09:00~10:30
10:40~12:10 |
講座③「日本語作文の授業デザイン」(藤井舞先生)
講座④「日本語作文の添削とフィードバック」(呉敏先生) |
ホールB | |
昼食 | 食堂 | ||
14:00~15:00
15:10~16:10
16:20~17:50
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公開授業討論会
辽宁省大连市第35中学 纪雪先生 辽宁省沈阳市外国语学校 吴梦菲先生 ワークショップⅡ 「添削実践練習と日本語作文授業案を考える」 教学経験交流会 江苏省宿迁市沭阳县建陵高级中学 侯利娜先生 「沭阳县日本語教育全体の状況」 辽宁省大连市第35中学 刘欣先生 「大連市の伝統的な中等日本語教育の発展」 |
ホールB | |
夕食 | 食堂 | ||
19:30 | 送迎バス出発 | 校門 | |
8月2日 | 08:10 | 送迎バス出発 | ホテル入口 |
09:00~10:40
10:40~12:00 |
ワークショップⅢ「ポスター発表作業」
ワークショップⅣ「ポスター発表」 |
ホールB
一般教室 |
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昼食 | 食堂 | ||
14:00~15:30
15:40~16:10 16:10~16:40 16:40~17:30 |
日本文化体験
人民教育出版社初中等用日本語教材紹介 主催団体紹介 アンケート記入、修了証授与、閉会式 |
一般教室
ホールB |
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18:00 | 送迎バス出発 | 校門 | |
8月3日 | ~12:00 | 解散(各自チェックアウト) |
講座
◆講座①「高考日本語の改革」(教育部試験センター 高昇先生)
前半では新しくなった高考の動向を試験センターの統計を基に発表いただき、後半では日本語高考の中で作文の占める割合や高考改革について話をしていただきました。
◆講座②「核心素養と作文教授」(人民教育出版社 李家祥先生)
「核心素養」の4要素について説明されたあと、作文授業でどのように核心素養を育むことができるかを具体例を用いながら解説していただきました。
◆講座③「日本語作文の授業デザイン」(北京日本文化センター 藤井舞先生)
具体的な作文指導の授業デザインについて「前作業」を中心に活動例を用いながら紹介していただきました。
◆講座④「日本語作文の添削とフィードバック」(北京市月壇中学 呉敏先生)
生徒が書いた作文をどのように添削し、評価するかを中国人学習者の誤用例を用いながら説明していただきました。
ワークショップ(以下WS)
講座で得た知識を自分のものにすることを目標に、4 ~5人の小人数の班でポスターに新しい作文授業案を書きました。
◆WSⅠ「研修目標を立てる」
アイスブレイキングとして「共通点さがしゲーム」をした後、「悩み共有」を行い、グループで話しやすい環境を整えました。最後に、研修に臨む姿勢を明確にするため、各自自分の研修目標を立てました。
◆WSⅡ「添削体験」と「授業案を考える」
講座④で得た知識をもとに、実際に吴敏先生の学校で書かれた作文をグループで添削体験をしました。その後、講座や事前課題の共有を経て、自分たちでどんな作文授業ができるかをグループで考え、テーマを決め、テーマ分析を行いました。
◆WSⅢ「ポスター発表準備」
グループで1つ作文授業を考え、「授業目標」「核心素養」「前作業」「評価」というところに注意しながらその授業案を模造紙に書き、発表準備をしました。
◆WSⅣ「ポスター発表」
全体を7分会に分け、分会ごとに1グループ7分程度の発表を行いました。講師からはそれぞれ授業案に対してコメントを行い、各班同士でも検討を行いました。
公開授業検討会
予め2つの授業をビデオ撮影し、そのビデオを当日までに各自で観察、コメントをシートに記入しました。そのコメントをもとにグループで話し合い、授業を担当した教師が感想を述べました。最後に北京日本文化センターの日本語専門家が講評を行いました。
辽宁省大连市第35中学 纪雪先生 授業テーマ「私の学校を紹介する」
辽宁省沈阳市外国语学校 吴梦菲先生 授業テーマ「瀋陽市の観光路線マップを作る」
教学経験交流会
1人45分中国語で自分が所属する学校の日本語教育事情について話をしていただきました。
◆江苏省宿迁市沭阳县建陵高级中学 侯利娜先生「沭阳县日本語教育全体の状況」
近年学習者数が急増している南方地域を代表して、日本語教育全体の状況について話していただきました。英語の成績が悪い生徒が第一外国語を日本語に切り替え、成績が良くなったという話をされました。
◆辽宁省大连市第35中学 刘欣先生 「大連市の伝統的な中等日本語教育の発展」
中国では早くから日本語教育が行われてきた東北地域を代表して、大連地域の伝統的な日本語教育状況について話していただきました。近年は学習者が減ってきており、いかに学習者数を確保するかが課題であるという話がありました。
日本文化体験
恒例の日本文化体験の時間では、4つの日本文化体験を1つの文化体験を1教室30分1セットとし、計3セット行われました。参加者は30分ごとに好きな文化体験をすることができました。
◆人教社 若林・北京日本文化センター 浦井 「俳句・川柳」
「5・7・5のリズムで楽しむ日本語」をテーマに、俳句と川柳のルールを紹介していただきました。ルールを学んだ後、参加者は自分の気持ちを川柳にし、1人1句詠みました。
◆江苏省泰州市泰州市民兴实验中学 近藤千晶先生「阿波踊り」
徳島県発祥の「阿波踊り」を近藤先生がクイズや動画を用いて紹介していただきました。後半では先生と一緒に実際に踊りの練習をしました。
◆辽宁省沈阳市外国语学校 崔长志先生 「書道で論語を書く」
日本文化にもなった書道で、中国文学である論語を書きました。瀋陽外国語学校にある書道教室を使わせていただきました。
◆辽宁省沈阳市绿岛学校 雷蕾先生 「折り紙」
よく目にする「鶴」や「紙飛行機」といった簡単な折り紙ではなく、いつもより難しい「兜」や「和服」などの折り紙を紹介していただきました。
アンケート結果グラフ(抜粋)
研修を終えて
今回は研修当日には127名の参加者が来られました。この数は人教社と共催になって18年目になりますが、過去最高です。また、参加者の地域傾向を見ると東北地方での開催にもかかわらず、半数以上が南地域からの参加でした。北は黒竜江省、南は広東省と全国各地からたくさんの先生方が参加され、中国全土の先生と交流ができたことと思います。
また、参加者アンケートの結果から若い先生が多いことや、研修に初めて参加したという先生が多いことが分かりました。これから日本語教師を目指す先生や、「まだ研修会に参加したことが無いけど参加しても大丈夫かな?」と心配されている先生方も参加しやすい研修会だと思います。
研修中、連日40度近い猛暑となり、参加された先生方からは汗が止まらないという声が聞こえてきました。皆さんの熱意を受け、瀋陽市の天気もヒートアップしたんじゃないでしょうか。
参加された皆さんには、ぜひ今回の研修で学んだことを現場で活かしていただきたいと思います。
以上