「2016年春季全国中等日本語教師研修会」実施報告
北京日本文化センターは人民教育出版社と共催で、毎年春と夏に全国の初等・中等教育機関の日本語教師を対象とした研修会を行っています。この研修会では、新しい教育理念を考えると同時に、自分たちの日々の授業を振り返ることができるように内容を工夫しています。以下に、2016年春季研修の様子をご報告します。
日程:2016年3月18日(金)~21日(月)
会場:長沙外国語学校(湖南省長沙市)
主催:国際交流基金北京日本文化センター・人民教育出版社課程教材研究所
テーマ:「多方面から考える作文授業」
参加者:52名(39機関)
内容:「書く」ために必要な能力とは何か、その養成にはどのような授業が考えられるか、講義やグループワークを通して考えました。
プログラム詳細
(1)事前課題
「書く」活動の目標、前作業、本作業、後作業、評価を考えてもらいました。また、研修で3~4人のグループに分かれ、自分が考えたものを説明し合い、コメントしました。
(2)テーマに関する講義
◆講義1「課程標準から作文教育を考える」 担当:李家祥(人民教育出版社)
課程標準から見た「書く」能力とは何か、そこから必要な作文授業を考えました。
◆講義2「授業デザインから作文教育を考える」 担当:平田好(北京日本文化センター)
コミュニケーションとして「書く」活動を捉え、その能力を高めるための、プロセス重視の授業を考えました。
◆講義3「教科書を生かして作文授業を行う」 担当:張敏(人民教育出版社)
人教社出版の『日語』応用作文入門を紹介しながら、作文のテーマや内容について説明しました。
◆ワークショップ「作文の評価とフィードバック」 担当:清水美帆(北京日本文化センター)
自己・他者評価、評価シートやルーブリックを用いた評価を紹介しました。
◆講義4「高考の試験問題の傾向と対策」 担当:皮俊珺・張金龍(人民教育出版社)
高考(大学入試)の過去の作文試験問題を分析しました。
◆ポートフォリオ説明 担当:張碩講師
学習者ポートフォリオと教師ポートフォリオについて説明しました。
(3)ワークショップ(3~4人のグループ作業)
担当:張金龍(人民教育出版社)・清水美帆(北京日本文化センター)
ワークショップ(WS)を通して、自分の作文授業を振り返り、改善点を考えました。また、グループごとによりよい作文授業をデザインし、最後にポスター発表を実施しました。
流れ:
研修2日目(19日) | ||
WS1(60分) | 事前課題のふり返り | 自分の作文授業を振り返り、改善点を考える。 |
WS2(70分) | 事前課題のふり返りと修正 | 指定の教材を使ってどのような作文授業を行うか、グループごとに考える。 |
WS3(50分) | ポスター作成 | ポスターの下書きをする。 |
研修3日目(20日) | ||
WS4(60分) | ポスター作成、完成 | ポスターをまとめ、発表準備を行う。 |
WS5(90分) | 総合ポスター発表
|
全体を2つに分け、各グループ8分ずつ発表する。聞き手は付箋にコメントを書く。 |
グループワーク
ポスター発表
(4)作文授業の見学
担当:危菡先生(長沙外国語学校)、小川佳子専門家(北京日本文化センター)
長沙外国語学校の危菡先生による、高校1年生22名を対象とする作文授業を見学。「わたしの趣味」というテーマで作文する際の前作業を実践していただきました。
(5)教学経験交流会
下記の6つのグループに分かれ、自由に話し合いを行いました。議事録は、「中等日本語教師QQ郡」(グループNO. 132410723)でも共有しています。
①読解
②聴解
➂会話
④文法
⑤興味を引き出すには(レベル差、大人数クラスの悩み)
⑥第二外国語としての日本語授業
(6)授業実践例紹介
参加教師から様々な授業実践例の発表もありました。
①任若男先生(山东省鱼台一中) 「日本文化微课堂」
②周菲先生(广东省广州外国语学校) 「笔触假名,品味墨韵——记广州外国语学校日语假名书写比赛」
➂索莉虹先生(陕西省西安外国语学校) 「体验式文化交流—从校际到国际」
④若林和夫氏(人民教育出版社) 「授業の活動ヒントいろいろ」
参加教師による授業実践例紹介
(7)その他のプログラム
◆『艾琳学日语』紹介 担当:清水美帆(北京日本文化センター)
《艾琳学日语》は、DVDで学ぶ日本語『エリンが挑戦!にほんごできます。』を、中国向けに特別に再編集した日本語学習教材です。教材の概要と、授業での活用例を紹介しました。
※参考サイト
WEB版『エリンが挑戦!にほんごできます。』 https://www.erin.ne.jp/jp/
『艾琳学日语』特設サイト(中国語) http://www.jpfbj.cn/erin/
(8)研修ポートフォリオ記入 担当:小川佳子(北京日本文化センター)
毎日最後にふり返りを行い、研修でわかったこと、わからなかったことを整理しました。
研修を終えて
「書く」活動では、日本語の正しさに気をつけながら文章を書くだけでなく、自分が何を書きたいかを「考える」プロセスになります。そのプロセスを助けるために、どのような授業活動が考えられるか、本研修を通して様々な角度から考えることができました。この研修で得たことを各教育現場に持ち帰り、他の教師とも共有し、実践されていくよう期待しています。
アンケート記述(原文ママ)
<日本語コメントより>
・今後の教育実践で使える且つ本当に素晴らしい方法を多方面から学びました。これからも、今回のような具体的なテーマの決まった研修会があったらと期待しております。
<中国語コメントより>
・我认为这次研修非常成功,本人受益匪浅。课程、活动的时间安排、顺序较合理,每位教师授课认真、有趣,让我深受感动。今后还希望参加这样的研修,为日语教育事业尽微薄之力。
・在这次研修会上,除了写作方面的教学技能外,也学到了很多知识,了解了其他地区的日语学习情况,对以后的教学很有用。
・不仅有老师理论上的讲解和写作指导建议,还通过一堂一教师的实践课和我们自己设计一堂作文指导课来学习写作课的教法真是受益匪浅。希望下次还有机会来参加这样的学习。
参加者所属機関(39機関):
吉林省:吉林省敦化市第二中学校
吉林省和龙高级中学
吉林省镇赉县第一中学校
吉林省镇赉县第三中学校
长春日章学园高中
遼寧省:辽宁省葫芦岛市建昌县凌东高级中学
大连四十中学
大连市一0三中学
大连市第一中学
大连市第五十一中学
大连市第三十一中学
大连市第三十七中学
大连市第四十八中学
大连市第十三中学
大连市第二十六中学
大连市第六中学
大连市经济贸易学校
山西省:侯马市职业中专学校
山東省:威海市第3中学
威海市第4中学
济宁市鱼台县第一中学
江蘇省:泰州民兴实验中学
无锡市第一女子中学
苏州市第三中学校
邳州市第四中学
浙江省:杭州外国语学校
湖南省:湖南省衡阳市第7中学
衡阳市第七中学
长沙外国语学校
湖北省:恩施咸丰第一高级中学
华师大来凤附中来凤一中
貴州省:贵州省凯里一中
陝西省:西安外国语学校
広東省:深圳外国语学校
中山市杨仙逸中学
广州外国语学校
广州市西关外国语学校
广东省中山市小榄花城中学
广东省中山市小榄中学
2016年全国春季中等教育日本語教師研修会
2016年3月18日(金)~21日(月) 於:長沙外国語学校
日程表
日 | 内 容 | 担 当 | |
3/18(金)
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午後 | 開会式・オリエンテーション | 皮俊珺 |
中等の教科書の中の作文授業 | 唐磊 | ||
●講義1 課程標準から作文教育を考える | 李家祥 | ||
●講義2 授業デザインから作文教育を考える | 平田好 | ||
ポートフォリオ説明 | 張碩 | ||
ポートフォリオ記入 ※当日都合により実施せず | 小川佳子 | ||
懇親会 | |||
3/19(土)
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午前 | ★ワークショップ1 | 張金龍、清水美帆 |
●講義3 教科書を生かして作文教育を行う | 張敏 | ||
★ワークショップ2 | 張金龍、清水美帆 | ||
午後 | 作文授業の見学・ふり返り | 小川佳子 | |
見学授業の振り返り | |||
★ワークショップ3 | 張金龍、清水美帆 | ||
ふりかえり ポートフォリオ記入 | 小川佳子 | ||
3/20(日)
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午前 | ●講義4 作文の評価とフィードバック 前半 | 清水美帆 |
★ワークショップ4 | 張金龍、清水美帆 | ||
午後 | ★ワークショップ5 総合ポスター発表 | 張金龍、清水美帆 | |
●講義5 高考作文問題の分析と対策 | 皮俊珺、張金龍 | ||
ふりかえり・ポートフォリオ記入 | 小川佳子 | ||
3/21(月)
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午前 | 国際交流基金紹介 | 張玉潔 |
『艾琳学日語』(『エリンが挑戦!にほんごできます』中国版)紹介 | 清水美帆 | ||
2015エリンテーマソング合唱&歌詞コンテスト 表彰式 | |||
授業実践例紹介(参加教師による発表)
①任若男先生(山东省鱼台一中) 「日本文化微课堂」 ②周菲先生(广东省广州外国语学校) 「笔触假名,品味墨韵——记广州外国语学校日语假名书写比赛」 ③索莉虹先生(陕西省西安外国语学校) 「体验式文化交流—从校际到国际」 ④若林和夫氏(人民教育出版社) 「授業の活動ヒントいろいろ」 |
若林和夫 | ||
教学経験交流会 | 張金龍、清水美帆 | ||
午後 | 人教社、日本語教材紹介 | 張敏 | |
全体ふりかえり・ポートフォリオ記入 | 小川佳子 | ||
修了式 |